事業所紹介
1804年に半田の地で創業したミツカングループ。220年にわたる歴史は、初代又左衛門が酒粕から粕酢造りに成功したことから始まりました。
当時人口100万人といわれた大都市「江戸」では食文化も発達、庶民の間でも手軽な外食としてそば・寿し・天婦羅などを屋台で食べる風習が定着していました。江戸視察に訪れた又左衛門は屋台で庶民に親しまれる寿司と出会い、酒造後に大量に残る酒粕を使って酢を造ることを着想。米を用いた酢に比べて安さと旨味の強さが評判を呼び、江戸時代の庶民の間に寿司が大きく普及する要因となりました。
祖業の食酢醸造を大切にしながら、総合食品メーカーに発展
代々の食酢醸造だけでなく、ビール製造や知多地域のインフラ整備にも尽力。明治34年(1901年)には一族の共同出資により「中埜銀行」を設立、地元のさまざまな企業を金融事業を通じてサポートし、地域の発展に大きな役割を果たしました。「中埜銀行」は戦時の国策により名古屋の銀行に吸収され、後に東海銀行(現在のUFJ銀行)になりました。
1964年には「ミツカン味ぽん」が誕生。以降「おむすび山」やめんつゆ、鍋つゆなどヒット商品を次々と生み出し、総合食品メーカーとして発展を遂げました。平成9年(1997年)には納豆の製造・販売に本格参入、現在では納豆においても高いシェアを獲得するに至っています。
1981年にはアメリカ大手食酢メーカー「アメリカン・インダストリー社」を買収し本格的に海外進出を開始。現在ミツカングループの海外売上の割合は約6割、北米だけでなく、欧州、アジアにおいても事業展開を進め、食におけるグローバル企業に成長をしています。
2019年には、人や環境への負荷が少なく、「おいしさ」と「カラダにいい」をともに叶えるあたらしい食生活を実現するため「ZENB事業」がスタート。植物を可能な限りまるごと食べる、というコンセプトで、サステナブルな食糧生産や人々の健康に貢献できる商品を開発。うす皮までまるごとの黄えんどう豆を使った「ZENB NOODLE」、「ZENB CHIPS」をはじめ、皮や芯までなるべくまるごと野菜をベースにした「ZENB PASTE」や「ZENB CURRY」など、素材そのもののおいしさと栄養を活かした商品を展開しています。
ミツカンの酢づくりの歴史や食文化の魅力を楽しみながら学べる施設
ミツカンミュージアムは、創業の地に設立した体験型博物館。昔ながらの情緒が残る運河沿いの黒塀の景観とともに、江戸時代の酢づくりの様子や、脈々と受け継がれてきた醸造の技術、伝統的な食文化の歴史や魅力などを、見てさわって、楽しみながら学ぶことができます。地域の観光に寄与し、また、将来を担う子供たちの学習機会の場としても活用できる施設として設立されました。
館内は5つの展示ゾーンに分けられ、江戸時代から現在に至る醸造の歴史にふれることができる「大地の蔵」、昔懐かしい半田の情景や人々の息吹を写真と音で感じる「風の回廊」、ミツカンの変革と挑戦の歴史をたどる「時の蔵」、四季の中にある食といのちのつながりを美しい自然のなかに表現した「水のシアター」、開放的な光あふれる空間で体験を通じ食の魅力を楽しく学ぶことができる「光の庭」と、コンテンツが充実。
江戸で好評を博した粕酢の流通を支えた、310石積の「弁才船(べざいせん)」も実寸大で復元され展示されています。310石積とは米を310石積むことができる船の大きさということで、換算すると約46トンとなります。千石船と言われる大型船が一般的だった当時においては小さな部類になりますが、小回りがきき、積荷の積み下ろしに要する時間も短く済み、江戸の需要にスピーディーに応えられることから小型の弁才船が多く使われていました。小型といっても室内に展示されている光景は圧巻。粕酢を大量に江戸に運んだ、その挑戦を肌で感じることができます。